まちづくりレポート
テーマ:使いやすい空港とは=広島空港民営化による今後の地方空港=
Spot1.イントロダクション

日本の空港は全国に多く点在し、首都圏である東京国際空港からの路線を軸としており、競合する新幹線の整備により、大きく衰退する空港も見受けられる。
一方、新幹線で4時間程度の位置では,「4時間の壁」といわれる新幹線と飛行機との利用者の分岐点とされている。しかし、2時間程度の距離でも飛行機利用の多い路線もあり、所要時間だけが移動手段を決定しているとは言い難い。
現在、空港運営を民営化する方向にあり、全国的に民営化がすすんでいる。民営化により、着陸料の設定などが柔軟にできる等のメリットがあり、就航路線や利用客の増加に期待が高まっている。今回は、身近に存在する広島空港にスポットを当てて、現在から今後を推察した。

Spot2.広島空港とは

広島空港は標高300mに位置し、広島市街地からバスで40分から1時間程度の所要時間である。しばしばアクセスが悪く使いにくいという意見があるが、市街地周辺の地形、市街地への騒音等の環境面を考慮すると、現在の位置が選定されたのも不思議ではない。広島県の地形は、まとまった平地は市街化しているうえ、海は漁業関係や景観環境、山間部は現状の交通機関が乏しいなどの問題点がある。国内就航路線は東京をはじめ、札幌、沖縄、仙台、成田である。


Spot3.空港民営化

2021年より空港民営化がなされ、地元企業の連合体により経営が始まった。タイミングとしては新型コロナウイルスの影響による国際線の運休、国内線の減便により、当初の経営計画からの乖離が予想されるが、新しい生活スタイルを踏まえた需要の回復が望まれる。


Spot4.地域交通の補完機能

空港へのアクセス手段(高速バス)は、東広島市河内町から、三原市、尾道市と広島市への交通を補完する役割を担う可能性を有している。現状としては、東広島から新尾道(尾道)間において、新幹線が1時間1本、在来線における広島方面も同様となりつつある。
このような状況下において、空港アクセスバスは、広島方面への地域交通の一つとしてアピールでき、空港のパークアンドライド機能を加えることができる。
広島空港は、軌道系アクセスと比較して、道路アクセスは充実しているため、バスアクセスは有利と思われる。先述したアクセスバスは、現状の直送輸送としている高速バス路線を空港経由輸送にシフトすることも可能であり、コロナ禍で減少している都市間輸送に空港利用需要を加えることができるかもしれない。



Spot5.既存の国際空港への空路=関西方面のローコスト化=

広島空港に就航している海外路線の多くは、関西国際空港、新東京国際空港にも就航している。航空会社が複数路線就航するには一定量の需要が必要であり、低い搭乗率であれば撤退する可能性もある。
主要な玄関口から安定的に利用客を確保するためには、先述の2空港からのLCCによる集客が必要と思われる。 特に関西国際空港については、関西方面への運賃の割引プラン(鉄道)が乏しく、関東方面への移動の方が割安感がある。そのため、関西方面へのLCCは国内需要も創出可能と思われる。割安な移動手段として高速バスが挙げられるが、移動時間が4時間程度必要とするため、空港へのアクセス時間を含めても航空利用価値が高い。特に世界的な航空需要の回復までには、必要な路線かもしれない。



Spot6.東京と田舎暮らしをつなぐ

広島空港の立地は市街地から遠いという点は先述の通りである。昨今のコロナ禍においては、サテライトオフィスのように、働く場所に自由度のある仕事の場合がある。特に、自然に囲まれた場所で働くスタイルには、この空港の立地はメリットと考えられる。広島県は春夏秋冬を楽しめる自然があり、空港への道路網を生かせば、東京との行き来は市街地の生活と比較して、スムーズなものに感じる部分もある。



Spot7.アクセスの改善=交通手段の多様化=

駐車場の拡大
自家用車による空港利用が多いことは、駐車場の不足が懸念される。空港駐車場は、空港利用者だけでなく周辺施設の利用者の駐車車両もある。空港利用者はできるだけターミナルビルに近い位置に駐車したい。 周辺の駐車場拡大を必要とする時が来るかもしれない。


レンタカーへのアクセス改善
自動車による利用者が多いため、レンタカーの需要も高い。現在のレンタカー利用方法は、カウンターにて受付後、送迎車によって受け渡し箇所へ移動するスタイルをとっている。そのため、移動開始までに時間を必要とする。また、事前に登録があれば、カーシェアを利用することができる。この場合、一般駐車場への徒歩移動で利用するスタイルとなる。理想的には、ターミナルビルからすぐに利用できることが好ましく、事前予約等により、隣接スペースからスムーズに利用できる体制が必用となる。


送迎車両の滞留解消
広島空港は自家用車による送迎車が多い傾向にある。しかしながら、自家用車が停車するスペースは僅かであり、付近に停車して待機している場合が多い。近年は駐車場料金を最初30分を無料にするなどの対策がとられているが、ターミナルビルから近い位置ほど混雑しており、敬遠されがちである。 こういった場合は、駐車場内に大規模の停車スペースを設け、待機車両を駐車場内へ誘導する事が好ましいと思われる。




Spot8.アクセス道路の渋滞対策

広島東ー志和間のリスクと渋滞緩和の試み
空港から広島市街間の渋滞は、アクセスバスの定時運行に致命的な影響を与える。この渋滞は同区間の迂回ルートがなく、全ての通行車両が集中する傾向にある影響が大きい。平行する国道のバイパス建設が進んでいるが、通行車両がシフトする割合は未知数であり、渋滞の発生確率はある程度残る。インフラ整備には莫大な費用と年月を必用とするため、ソフト面での対応が実現性が高い。渋滞解消には車間距離を十分に保つことが有効という研究結果があり、渋滞をコントロールするペースメーカーや注意喚起により、渋滞延長の低減が望まれる。



Spot9.利用スタイルを充実させる設備やサービス

コロナ禍による空港利用者は航空会社の減便によって左右されている。一方、テレワークやワーケーションといった移動を伴わないが、効率的に仕事ができる環境としてワークスペースの需要が高い。空港施設としてロビーやラウンジ、周辺のホテルといった休憩スペースをワークスペースとして利用しやすくすることで、空港の集客や新しい利用方法のひとつとして挙げることができる。
飛行機を利用する場合は、鉄道利用と比較して、待ち時間を多く必要とする。この「待ち時間」を「くつろげる時間」に変えることで、空港利用を促進することができるのではないだろうか。







参考資料

現在のところ,なし